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曖昧なままに
第8章 相和する時
全く……少し殊勝な様子だったと思えば、今度はこれだ。だから女ってやつは、理解できない。
そう思う一方で、色香を纏う奈央を前に、妙な気になるのも致し方なかった。
そうは言っても、流石に時と場所が悪過ぎる。奈央にしても、そのくらいの分別はある筈だ。その上で俺の反応を面白がっているなら、真面に相手をして損をするのはコッチである。
「ハイ――冗談は終わり。もう部屋に戻っても、大丈夫じゃないか」
俺がそう言うと、奈央は不機嫌そうに眉根を寄せた。
「中崎さんて、固い人ですよねー。私――タイプじゃないですか?」
そんなことはない――というか、十分に魅力的ですらある。だが今それを口にしても、状況を元に戻すだけだった。
「今は会社の旅行中――それを忘れていないか。こんな処を誰かに見られたら、お互い不味いだろ?」
「また誤魔化しちゃって……本当は、他に理由があるんでしょ?」
「それは――」
俺がその返答に窮する、そんなタイミングであった。
コンコン――と不躾なノックに続き、即座にガラッと開かれた引き戸の音。
「オイ、入るぞ」
との声を耳にして、俺と奈央はハッと顔を見合わせた。それは、柏原課長の声である。
や、やばいよ……。突然のその襲来に、激しい焦りが俺を襲った。まだ入口と部屋を隔てる戸が残されているが、それも数秒後には開かれてしまう。
俺は咄嗟に布団を頭から被ると、そのまま押し倒すように奈央の上へ――。
バサッ――! ガラッ――!
それとほぼ同時――戸が開くと、柏原課長が顔を覗かせた。
「中崎……一人か?」
「え、ええ……今、寝ようとしてたとこです」
「お前さ――奈央ちゃん、何処にいるか知らない?」
「に、西河さん――ですか? そう言えばさっき……大浴場の前で、見かけたような気も……」
「チッ、何だよ。邪魔したな」
吐き捨てるように言い、戻ろうとする課長。だが何かを気にするようにして、再度俺の方をまじまじと眺めた。
「中崎――お前」
「な……何か?」
「寝相、悪すぎだろ。布団がぐちゃぐちゃじゃねえか」
バタン。そう言い残して、課長は部屋を去って行った。
布団に押し込めた奈央を隠し通し、ホッと胸を撫で下ろす俺。すると――
「――!?」
首に絡みついた両腕が、俺の頭を布団の中へと引き込んだ。
そう思う一方で、色香を纏う奈央を前に、妙な気になるのも致し方なかった。
そうは言っても、流石に時と場所が悪過ぎる。奈央にしても、そのくらいの分別はある筈だ。その上で俺の反応を面白がっているなら、真面に相手をして損をするのはコッチである。
「ハイ――冗談は終わり。もう部屋に戻っても、大丈夫じゃないか」
俺がそう言うと、奈央は不機嫌そうに眉根を寄せた。
「中崎さんて、固い人ですよねー。私――タイプじゃないですか?」
そんなことはない――というか、十分に魅力的ですらある。だが今それを口にしても、状況を元に戻すだけだった。
「今は会社の旅行中――それを忘れていないか。こんな処を誰かに見られたら、お互い不味いだろ?」
「また誤魔化しちゃって……本当は、他に理由があるんでしょ?」
「それは――」
俺がその返答に窮する、そんなタイミングであった。
コンコン――と不躾なノックに続き、即座にガラッと開かれた引き戸の音。
「オイ、入るぞ」
との声を耳にして、俺と奈央はハッと顔を見合わせた。それは、柏原課長の声である。
や、やばいよ……。突然のその襲来に、激しい焦りが俺を襲った。まだ入口と部屋を隔てる戸が残されているが、それも数秒後には開かれてしまう。
俺は咄嗟に布団を頭から被ると、そのまま押し倒すように奈央の上へ――。
バサッ――! ガラッ――!
それとほぼ同時――戸が開くと、柏原課長が顔を覗かせた。
「中崎……一人か?」
「え、ええ……今、寝ようとしてたとこです」
「お前さ――奈央ちゃん、何処にいるか知らない?」
「に、西河さん――ですか? そう言えばさっき……大浴場の前で、見かけたような気も……」
「チッ、何だよ。邪魔したな」
吐き捨てるように言い、戻ろうとする課長。だが何かを気にするようにして、再度俺の方をまじまじと眺めた。
「中崎――お前」
「な……何か?」
「寝相、悪すぎだろ。布団がぐちゃぐちゃじゃねえか」
バタン。そう言い残して、課長は部屋を去って行った。
布団に押し込めた奈央を隠し通し、ホッと胸を撫で下ろす俺。すると――
「――!?」
首に絡みついた両腕が、俺の頭を布団の中へと引き込んだ。