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曖昧なままに
第8章 相和する時
 俺を――呑み込み尽くした瞬間。


「はあっ、ぁあ、ああぁ……!」


 奈央の全身が仰け反ると――

 ビクッ、ビクン……ビクン……。

 その腹部が、激しく脈打った――。

「あ……うう……」

 その声と波が徐々に鎮まるのを待ち、俺は愚かしくもこう訊ねる。

「もしかして――イッたの?」

「ああ、もう! わざわざ聞かないで。こんな姿見れば……わかるでしょ」

 クロスさせた腕で顔を隠し、奈央は照れと怒りの狭間でそう話した。

「いや……すまない」

 自分でも馬鹿なことを訊ねたと思う。だがついそうしたのは、俺の心理の内にその理由があるからだ。

 愛美と知り合って以降を省みれば、ひたすら果てさせられ続けた自分の姿である。愛美が齎す快楽に身を委ねながらも、決して満たされなかった内なる部分。

 それが今の奈央によって、補完された気がしたのだ。

 俺の『男』を迎え、満足を示した奈央。通常の男女間に於いて当然であろうことが、現在の俺にとって率直に喜ばしく思えている。


「ね――続けよ」

「ああ」

 俺は上体を重ねて奈央に軽くキスをし、腰を動かし始めた。

 絶頂を迎えた彼女の中は、熱が冷めたように何処かひんやりとしている。だが緩やかな往来を繰り返す最中で、再び熱量の高まりを感じた。

 それを自身も、自覚してのことであろう。奈央は積極的な姿勢に、転じようとする。

「ン……私にも……させて」

 奈央は身体を起こすと――座りの体勢を以て、自ら腰を振り快感を求めた。

 その両腕で強く抱かれた俺の顔面は、自然と豊満な胸へと押しつけられる。俺に跨る奈央の動きが激しさを増すと、目の前の乳房もたぷたぷと揺れた。

 グチュ――ズリュ――。二人の交わった境界が、淫靡な音と感触を刻む。

「あっ……あん」

「はあ……うっ……」

 時折、唇を探し重ね――両者の口より吐息が零れた。奈央のリズムが責め入る中で、俺は高みに到達しつつある事実を認識する。

 このまま……中で出してはいけない。

 ダイレクトな行為に臨んだ以上。俺には終わりの瞬間に、気を払う必要があった。

 奈央はそんな気持ちを察する。布団に身体を横たえ、行為のイニシアティブを俺へ委ねた。

 そして、俺の顔を見つめ――


「中崎さん……コレ、使っていいから」


 と、たわわな胸を両手で寄せる。
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