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曖昧なままに
第9章 乗り移りし妹
 次の日――。愛美は昼過ぎには、俺の部屋を訪れていた。

 てっきり夕方過ぎだと思っていた俺は、些か虚を衝かれた形である。どうやら愛美の方も、バイトが休みであったらしい。

「これ、旅行のお土産なんだ。良かったら家で食べて」

「あ、わざわざすみません。遠慮なくいただきます」

 旅先の銘菓(?)を手渡して、俺は当面の気まずさを回避した。この日の天気は、春の訪れを感じさせる暖かな晴天。そんな真昼間から、話を切り出すのは流石に気が咎めている。

 最も夜になれば、話し易い訳でもあるまいが……。

「せっかくの休みだし、何処か出かけようか?」

 これまでを鑑みれば、部屋で二人で過ごすのは良くない。俺は愛美を外に連れ出そうと、そんな提案をする。しかし愛美がこの時間に来たのは、彼女なりの目的があってのことだった。

「今日は私に、お部屋をお掃除させてください」

「え? いいよ……そんなの悪いし」

「私がしたいんですけど……いけませんか?」

 そんな風に上目使いに見つめられては、無下には断れまい。

「じゃあ……お願いしちゃおうかな」

「ハイ」

 笑顔で答える愛美を見て、俺はまたそのペースに巻き込まれる予感があった。

 だがこの後――それはほんの序章に過ぎないのだと、俺は嫌と言うほど思い知らされることとなる。

「では、ちょっと支度がありますので」

「あ、うん……?」

 そう話した愛美は、持参したバック片手に洗面所へ入って行く。そこで『支度』とやらを済ませて、その姿を現した時からソレは開始された。

 そう言えば以前、水着姿を披露している愛美。そんな想いもあり、俺にもある程度の耐性はあった筈だ。

 しかし愛美は――俺の貧相な想像力を遥かに超越する。

「お待たせしました」

「……」

 え……っと。どう言ったら、正解なのだろう。俺は暫し絶句していた。

 愛美が身に着けているのは、恐らくは高校生の制服。その上にピンク色でヒラヒラとした、可愛らしいエプロンを羽織っている。二つに纏めたおさげの髪(良くは知らんがツインテール、って言うべき?)が、肩口へ垂れていた。

「愛美……その恰好、何?」

 俺は――至極当然な疑問を口にする。
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