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第13章 心の中
彼に会うようになって
振り返ると一度もそれに襲われることがなかった
両親のことや
夫とのことで
一度圧し殺した感情が
沸き上がってきそうになっても
彼のことを考えると自然に心が穏やかになっていた
私は身も心も彼に寄りかかってしまいたいと
そう思っていた
夫のことや
彼のことを思うと
それを口に出すことができなかった
口に出してはいけないと
そう言い聞かせていた
でも今
彼は自分のしがらみや立場を分かっていて
それでも心の中を見せてくれている…
分かり合いたい
心を通わせたい
そう思い
私は彼に言った
「私…本当はたぶんすごくずるいし弱い…
そんな自分が嫌いで許せない
でも本当は…
自分を大切にしてあげたい…
今までできなかったの…
助けて…」
私は彼の胸にしがみついて
泣いていた
「分かった…分かったよ…
俺自信があるよ
美紗を受け止められる
大切にする
だから付き合おう…」
彼はそう言って私を強く抱き締めた
私がうなずいてしまえば
はじまってしまう
許されない関係…
でも彼と同じで
今までこんなに誰かを大切に思ったことはなかった
もう自分の気持ちを押さえることが
できないくらい
心が彼を求めて止まない
許されなくてもいい
罰を受けてもいい
私は彼と一緒にいたい
そう思いながら
私はうなずいた
はじめて会ったときから
一年
ずっとかたくなに閉ざしてしまっていた
自分の心を彼が
彼だけが少しずつ開いてくれる
生まれてはじめて知った
自分の中にある感情が抑えきれなくなって
言葉になる
「私ね…ずっとずっと
飯島くんのこと好きだったよ…
今は…もうそれ以上の気持ちになってる…」
そう伝えたとき
心の中でモヤモヤとしていたものが
すーっと消えてなくなっていく
どんな時でも
偽りの私で誤魔化すようなことはせず
彼の心と真っ直ぐ向かい合っていこう
そう心に誓っていた