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第13章 心の中

その日夕方自宅に帰ると

「結婚記念日だからね」
と夫に誘われ外食をした

頭がぼんやりしていた
罪悪感を感じながらも
当たり前にいつものように振舞う私がいた

そうなったからと言って
「他に好きな人ができたから」
と私は目の前の夫と別れることができるのだろうか…

そんなことを考えてしまっていた

ベットに入ると
夫が私を求める

今日は…
せめて今日だけは
彼のぬくもりの余韻を消したくなくて

「来ちゃったの…ごめんね…」
と不順を言い訳に嘘をついてしまう

自分への罪悪感と
申し訳ない気持ちで
夫のあそこを口に含んだ

いつものように
ゆっくりと丁寧に…

夫が私の口の中で果てたあと
飲み込むことに躊躇してしまっていた

こんな今まで当たり前だったことにさえ
気持ちが離れてしまうと
拒絶してしまうんだと
そんな自分自身に嫌気を感じながらも

それも仕方のないことのような気がしていた


夫とは車の中の一件以来
距離ができてしまっていた
最初はそのうち機嫌をなおすだろうと
いつものように私の側を離れず
求めてきていたけど
私は見えない壁をつくってしまっていた

これ以上は来ないで
これ以上は聞かないで
それ以上言わないで…

そうでないと
私はあなたといられなくなってしまう…

言えない気持ちが態度に現れてしまっていたのか
夫が私との距離を少しずつ保つようになり
会話も少なくなっていた

日曜日は相変わらず必ず二人で
出掛けていたし
何気ない話で笑い合うこともあったけど
私はきっともうこれ以上は
前のようには戻れないと
そう思っていた


私は思わず聞いてしまう

「ねぇ…もし私が別れたいって言ったら
どうする?」

突然の質問に驚いた顔をして
夫はしばらく黙って答えた

「俺のことが嫌いで憎くてなら仕方ないなら
あきらめるかな…
でも美紗は優しいしな…
俺は…情けないけど…
そう言われたとしても
美紗にしがみつくかもしれないな…」

その言葉に
夫らしさを感じる

弱くて
不器用で
それを隠そうとしない

私はそんな夫のことを
頼りないと感じながらも
それでもいいと思っていた

私から一方的に離れることは
できないのかもしれないと
そう感じた


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