この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
35
第13章 心の中
年末にお店は閉店となり
たくさんの常連さんに囲まれたママは
肝臓と腎臓がかなり弱っているから
年が明けたら入院して
治療に専念すると言っていた
皆それに少しも気付かなかった
ママはいつも気丈に穏やかに振舞い
それを出すことが全くなかった
そんなママを尊敬していた
「美紗ちゃん…
ママあなたのことが一番気がかりなの…」
そんな中でも私を心配する
ママに歩みより飯島くんが耳打ちをした
ママは驚いた顔をしたあと
「やっぱりねぇ…そうよねぇ…
良かったそれなら安心だわ…」
ママが私に微笑む
私はママに今まで伝えることが
できなかった気持ちを素直に伝える
「ママ…色々迷惑や心配をかけてしまって
本当にごめんなさい
私…ママのこと尊敬しています
大好きです
私はママに出会えてこのお店に出会えて
本当に感謝しています
ありがとうございました」
今まで思っていても口に出せなかった
彼と繋がった日から
私は自分の思うことを
ほんの少しずつだけど
言葉に出せるようになっていた
どれを言って
どれを言わないほうが良いのか
伝えなければならないようなことでさえも
選択して間違っていたらと
そのほとんどを
飲み込むことしかできなくなっていた私に
「言わなきゃ分からないんだよ
向き合うことがまずできないんだ
皆にじゃなくていいんだから
せめて俺には選択しないままの状態で
口に出せばいい
それでその後二人で選択すればいいんだからさ」
そう言ってくれた彼の言葉には
今まで探しても探しても
分からなかった答えがあった
私は誰かと深く向き合うことを
恐れていた
本当の私を知られてしまうのが怖くて
誰にも何も分からなくてかまわないと
そう思ってしまっていた
私は
一人で…自分でどうにかしなければ
と小さな頃から縛られていた
その言葉の呪縛から
解き放たれたいと
心から思っている
そのためには
飲み込む前にまずは
口に出すことをはじめてみようと
そう思っていた
「ママね…美紗ちゃんは真面目だから
飯島くんの気持ちには応えられないかなって
思ってたの
お店で二人並んで座って話す姿をいつも見ててね
飯島くんだったら美紗ちゃんを助けてくれるのに
なんて思ってたの…
飯島くんに聞いたわ…
美紗ちゃん…少しは誰かに甘えなさいな…」
ママは優しくそう言ってくれた