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第13章 心の中

年末年始はお互いに家族サービスをしようと
一週間会うことができなかった

彼と過ごすようになってから
二日に一度は一緒に過ごすようになっていた

毎日会いたいと
思っていた
夢にまで彼が現れた

でも不思議と切なく苦しい思いではなかった

彼と過ごしてきた穏やかで
温かい時間が不安やさみしさを消してくれる

誰かを想って
こんなにも温かい気持ちになれることを
知らなかった

彼とは緊急時以外はほとんど連絡をとらない
私と一緒に過ごす時間以外の彼は
仕事に追われ忙しくしていることを知っていた
だから私からそうしようと決めていた

「明けましておめでとう
今年もよろしくね
早く会いたいです」

元旦に彼からはじめてのメールが届く
私はそれだけでドキドキして
とても嬉かった

年が明けて最初に会った日
彼はいつものように優しい笑顔で
私の手を握った

食事をして
ホテルに入り
私は久しぶりの彼の姿に
嬉しくて抱きついてキスをする

「本当にかわいいな
前はもっとドライな感じがあったけど
こっちの美紗のほうがいいよ」

彼は私を痛いくらい抱き締めてくれた

彼と身体を重ねてから年末まで
数回会っていたけど
彼は私を求めて来なかった

だから今日は来るかな…と
心の中でドキドキしている私がいた

「話したいんだけどいい?」
彼が聞く

彼は大事な何かを話はじめるとき必ず
そう言って確認する

「どうしたの?」
私が少し不安に思って聞くと

「大丈夫だよ
悪い話じゃないから…
美紗今不安になっただろ」
彼が隣に座って優しく微笑んだ

私は彼の前だと無防備になってしまう
普段は喜怒哀楽をあまり多く出さないよう
自分をコントロールしていた
でも彼といるとそれが上手にできない

「美紗…店他に探すって言ってただろ?
俺考えてたんだけどさ
働かないか?俺のとこでさ」

「え????」

私はわけが分からずきょとんとしてしまう

「もう夜の仕事はしてほしくないんだ
でも働かなければならないんだろ?
本当はさ…こうしていても美紗が必要なお金くらい
渡してやれるけど
美紗は絶対嫌がるだろ?
だからうちの会社で働いてほしいんだ」

「でも…」

うつむく私に

「そのでも…のあとの美紗の中の気持ち
全部言ってみて」

彼に真っ直ぐ見つめられ
私は全てを正直に話す…





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