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第13章 心の中
彼の気持ちがすごくすごく嬉しいこと
でも申し訳なくてたまらないこと
父のこと…
私がそれをしてしまうことは
父と同じことになってしまうということ
子供の頃に母があの女の人を追いかけていった
あの時の気持ちと重なってしまって
どうしたらいいか分からなくなってしまうこと…
それをしたら
私は自分自身を責め苦しくなるような気がすること…
彼はうなずきながら
話を聞くと
しばらく黙ってから口を開く
「確かにそうかもしれないな
俺知らなかったからごめんな…
でもな…
美紗のお父さんと俺は違う
悪いことをしているのは…
ずるいのは同じかもしれないけど
そしたらこの関係も全否定しなきゃいけなくなる
美紗は俺と付き合うこと自体も本当は
そう思う?
美紗が苦しい切ない思いをするなら
俺だって一緒に苦しくなるんだよ…」
彼が悲しそうな顔をしていた
誰かが聞けば
父も彼も私も皆同じで最低だ
と思われることなのだろう
私は都合よく甘く切ない現実逃避に
酔うつもりはない
ただ
彼が必要でどうしても一緒にいたい
そのためなら何を失うとしても後悔しない
そう思ってしまっている
私はしばらく考え
彼の考えを受け入れて甘えさせてもらいたいと
お願いした
「美紗…俺がなんでしてこないんだろうって
思ってた?」
彼が聞く
私がうなずくと
「毎日でも会うたびでも抱きたいよ
本当はね
でもそれをしていたら
美紗はきっと
何を信じていいか分からなくなるだろ?
身体だけなんじゃないかって心を閉ざすだろ?
俺はそんなことで嫌われたくないし
まず美紗には何が必要か考えて話をして
美紗が本当に俺に心を許せるようになってからでも
俺は全然かまわないんだ…」
私は思わず
「でも…それじゃ…」
と呟く
「俺はどうするんだって
美紗は優しいからそう思うだろ?
それから他でするんじゃないかとか
また風俗とかって
今まで男に抱いてきた不信感を抱く…」
全くその通りだった
私は何も言えない