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第14章 二年
それから数ヵ月
朝5時に起床しシャワーを浴び
夫のお弁当を作り見送ると
身支度をして高速に乗り
仕事をし
彼が空いた時間を二人で過ごすようになっていた
夕方自宅に帰ると家事を済ませ
夫の帰宅を待つ
夕食を二人で食べ
リビングで過ごすわずかな時間に
夫との距離を実感する
ソファにもたれテレビを見る夫の
すぐ隣に座らなくなっていた
「こっち来て…」
と甘えたように私の手を引く夫の姿はない
「会話があるだけまだマシだな」
と彼が言ってたいた
私はその夫との距離を縮めようとも
これ以上広げようとも
思っていない
何も不満はないと感じていた
ある日夜遅くに母から電話が鳴る
「お父さんがまた…」
実家で父の具合が悪くなり救急車を呼んだという
私は退院してからの父からの
お金の無心に疲れはて呆れていた
またか…
と退院して数日たつと
朝から出掛け夜まで帰らない
相変わらずな父のことなんて
どうにでもなってしまえばいいと
思うまでになっていた
「明日の朝…病院行くから…」
そう言って電話を切ると
夫が驚いた顔をして言った
「え、行かなくていいの?
行かないの?」
夫は何も知らない
私が父や母にお金を渡していることも
相変わらずな父に嫌気がさしてしまっていることも
私は夫に言ってもどうにもならないと
自分の親のことだから
自分自身でと
思ってしまっていたからだ
私の話をいくらでも聞いていることは
できるけど
最後には
「美紗のしたいようにすればいいよ」
と必ず言う夫に
どこか諦めにも似た感覚を覚え
やがて口に出さなくなった
私がそういった話をすると
心配しすぎる面だけが異常に暫くの間続く
電話やメール
「大丈夫?」
「どうなった?」
の言葉を聞きたくなかった
貯金の全てを失う時に
お金のことで揉めたりするのは嫌だし
両親のこともあって
仕事をしてお給料を
きちんと入れてくれているのだから
自分の負担は自分で解決しようと
心に決めていた
そして数年前
仕事を辞め新しい職場につくまで
「美紗も働いてるししばらくは大丈夫かな」
と
のらりくらりと過ごす夫の姿を見て
更に自分がきちんとやらなければと
甘えることを完全に止めてしまった
少しずつ
少しずつ
そうして私の夫に対する気持ちは
変化してしまっていた