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第16章 35

「うそっ…やっ…」
私は恥ずかしくて彼の手のバスタオルを
再びシーツに戻す

それは驚くほどの大きな楕円形を崩したような
模様をシーツに浮き出させていた

「信じられない…
私起きてすぐまた御手洗い行ったけど…」

どこからそれほどの水分が
生まれ出ていくのか不思議だった

彼は動揺し
ひどく恥ずかしがる私の姿に

「本当に二つ年上のお姉さんとは
思えないな…
それがまたたまらないんだけどな…」
そう言って優しく微笑んで肩を抱く

彼と重なるたび
私の身体は急激に変化をし続ける

嬉しく思うと同時に
少し不安がよぎる

彼は私との行為に
ただ溺れていくだけになってしまうのではないだろうか…
そして私もそうなってしまうのではないだろうか…

絶対に口に出してはいけない不安

彼に対して少しでもそんな風に思えてしまう
自分自身を疎ましく思う…

帰り際に彼の車から降りるとき
彼がいつまでも私を見ていた

私は笑顔でいつものように見送った


夜になってメールが届く
彼からのそれはとても珍しい

何かあったのではないかと
ドキドキする

「美沙の帰り際の顔が気になって仕方ない」
彼がいつまでも私を見ていた理由に気付く

なんでもないと
誤魔化せないくらいにお互いの変化に敏感なことは
良く知っている

私は
「明日会ったときに話すね
でも大したことじゃないから大丈夫だよ
ごめんね
ありがと」
と返信した

翌日朝早くに電話が鳴る
「用事は済ませてあるから
そっちに行くから」
彼は高速の手前と言う

私は何をどう伝えて良いかも分からないまま
彼の待つ場所へ向かう

彼が作り笑いをして
私に話す

「俺に言いたいことあるだろ?
大丈夫だから話して
あの寂しそうな悲しそうな
それでも笑ってる顔が頭から離れなくて
はじめてだったからあんな顔さ」
そう明るく話す彼の顔も
見たことのないくらいに不自然な笑顔だった

「ごめん……
私…不安になってたの…
色々考えたら急に不安になっちゃって
……言えなくて……」
うつむき話す私に彼が

「あぁ…
そっちか…なら良かった…いや
良くないけど
でも…俺はなんか美沙が傷つくようなことを
言ったかしたかと思ってさ…」
そう言ってホッとした顔をする







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