この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
35
第16章 35
もしかしたら生活費を出したくなくて
あるものをないと言っているだけかも…
督促状の話もお母さんがそうかもと
言っていただけ…
必死に冷静を保とうと
頭の中ををグルグルといろんな考えが回る
「お父さん…督促状って
なんのお金?
もう何も支払いはないはずなんだけど…」
父に聞くと
母を一度ちらっと見て
父が肩を落とし
首を擡げるようにして呟いた
「いや…銀行の…
年金が担保のローン…」
「え?
それも返済終わったから解約したけど…」
「新しく…借りて…
その引き落としで年金が半分なくなるから…」
「半分?
半分って言ったら10万円以上だよ?
いくら借りてるの?」
父はうつむいたまま暫く黙って
口を開いた
「150万……」
私は言葉が出なかった
通帳を見せてもらい確認すると
年金の支給日のすぐ後に
銀行から返済で引き落としがされていた
母は静かにただ泣いていた
「お父さん…
それでも年金の残りがあるでしょ?
家でおとなしくしてたら余分なお金
つかわなくて済むんだから
出掛けるのを辞めてお母さんに生活費を…」
言いかけたときに
父が突然大きな声をあげた
「俺だって楽しみくらいなきゃ
やってられねぇんだ!」
私の心の中で何かが弾けた
「楽しみ?
ずっと好き勝手してお金の始末はお兄ちゃんと
私に押し付けて何をまだ楽しみたいの?
土地のお金も散財したあげく
怒鳴らないでよ!」
生まれてはじめて
父に声を荒げた
一度溢れ吐き出したそれは止められない
「そうしてすぐ怒鳴って
それでも思い通りにならなければ殴って…
だからあなたのことが嫌いだったの
ずっとね
でもそれでも親だから娘だからって
そう思ってしてきたのに……
それでも家族のだれもお父さんを
責めて来なかったでしょ?
いい加減心を改めてくれないと
私も正直面倒見きれないよ…」
そう言った直後に父が言った
「じゃぁ俺はもう死ぬからいい!」
「それなら死んでよ!
今までお兄ちゃんだってお母さんだって
私だって
死んでしまったら困るってそう思って
やってきたのに
自分勝手できないだけでそんなこと言うなら
お父さんなんて家族じゃない!
骨はただ撒いてくれればいいからなんて言ってるけど
散骨だってタダじゃないんだよ!」
後から後から
言葉が溢れ出す