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35
第16章 35
「分かったから…
苦しいのか?吸って…吐いて…吸って…吐いて…」
私は彼の声だけに集中して
それに息を合わせ呼吸をする
吸っても吐いても息苦しくて
身体が震える
「大丈夫大丈夫…
俺が行くから安心しろ」
彼は電話を切らずに
私に声をかけ続ける
しばらくすると
頭がピリピリと痺れる感覚も
手足の震えも治まりはじめた
「涼…ありがとね
すごい楽になったからもう大丈夫だよ…」
そう話す途中に
私の車の横に彼の車が停まった
「助手席!」
私に声をかける彼に
「私…吐いちゃって
シート汚しちゃったから…」
そう言うと
「だからなんだ?関係ないから
早くそっち!」
彼にぐいぐいと身体を押され
助手席に移動する
「ほら…とりあえず飲め」
ペットボトルのお茶の蓋をとり
私に握らせると
車を走らせた
「ちょっと待ってな」
近くの小さなショッピングモールへと
走って行った彼を
私はぼんやり見つめていた
しばらくすると彼が戻ってきた
「美沙…服が汚れてるから
上着だけでも変えろ」
そう言って紙袋を私に差し出すと
ウェットティッシュで汚してしまった
運転席を掃除する
「あれからなんも食べてなかったな?
胃液だけだ…」
彼が呟いた
「ごめんね…本当に…ごめんなさい」
「メールも夕方2回したんだけどさ…
美沙は必ず遅れても返事くれるから
いい加減時間が過ぎても何もなかったし
実家に行くって言ってたから
気になってさ…」
彼がそう言って優しく笑った
「今日はもう会えないと思ったけど
逆にラッキーだったな!」
彼の無邪気に笑う顔を見て
私もつられて笑っていた
「家大丈夫か?実家も旦那も…」
そう聞かれ
「分からない…でも今はだめ…
無理…
家に帰って私の顔を見ればあの人は心配して
きっとまた私を閉じ込めようとする…
閉じ込められる訳じゃないかな…
でも私はがんじがらめにされた気分になる…
それは絶対にいや…」
私が首を強く横に振って話す姿を
彼が静止させるように
優しく頬に触る
「とりあえず実家にも家にも
連絡はしないと…
俺煙草吸って来るから」
そう言って彼は車を降りて行った