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35
第16章 35
「美沙…」
リビングに夫が目覚めて来ると
私の隣に座る
「2時だよ…寝なくていいの?」
私が聞くと
しばらく黙って
夫が口を開く
「美沙は俺と別れたいか?」
突然の言葉に私は戸惑う
「俺はさ…ずるいから
確信に触れるのが怖くて
聞けなかった
聞いたら終わると思ってたんだ
俺さ…距離を感じるようになってからずっと
考えてたんだ
半ば強引にあの時美沙を奪うようにして
だからこそ大切にしてきたつもりだったけど…
美沙は後悔してるのかって
幸せじゃないのかってさ…
だからいつ美沙が別れたいと言って来たとしても
仕方ないのかもなってさ…」
私はドキドキしていた
何を言われるのか
怖くてたまらなかった
ただ黙って聞くことしかできない
「でも美沙はどんな時にもここに帰ってきて
普通にしてただろ?
多分美沙の気持はどこかにいっちゃったのかもな
って分かってはいるつもりなんだ…
美沙…
俺とは無理なのか?
別れたいと思ってるのか?
教えて…」
夫の言葉に私は
全てを話す覚悟をした
今その場だけを取り繕うことは
誰のためにもならないと
思った
夫への恐怖心があの時から消せないこと
そしてその理由になっていたトラウマ
夫が私に執着しすぎていたことを
苦痛に感じてしまい逃れたいと
感じていたこと
ずっと話せなかった両親とのこと
お金のこと
アルバイトのこと…
そして
夫との間に自ら作ってしまった心の距離を
もう戻すことはできないと感じてしまっていること…
「それで…あのね…私…」
もう話すしかないと
全てを話すしかないと思い
覚悟をした
「美沙…俺にも聞きたくないこともあるから…
もういい………
ひとつだけ聞かせてくれ
俺と別れて一人になりたいか?」
私は何も言えなかった
考えても考えても
何も言えなかった
「ごめん…分からない…
嫌いと…そう思っていたとしたら
きっと私はこの家に帰って来なかったと思う…」
それだけしか言えなかった
「美沙…俺はさ…
美沙が別れたいとそう言ったら
今ここでって思ってた
でも分からないなら
それが分かるまでは一緒にいないか?
籍を抜きたいならそれでもいいし
そのままでもいい」
「でもそれじゃ…あまりにも…」
そう言いかけたときに
夫は言った