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第16章 35

「あ〜腹減った!
美沙昼飯行って昼寝…
これは一大事だ…」

私の顔を見た彼が目の前に座る

「顔…真っ青だけど
具合悪い?」
そう聞かれ首を横に振った

「昨日旦那さんがね…」

「ばれたか?」

「ううん…よく分からないけど…」
説明しようと話をはじめたときに
彼が言った

「俺さ…万が一揉めるようなことに
なったとしてもその場しのぎはしないつもりだよ
俺が結婚してることも
何もかも話すつもりでいるよ」

彼が真面目な顔をして
私を真っ直ぐ見る

「そういうんじゃなくて…
気持ちが離れてるのは分かってるって
確信に触れるのが怖かったって…」
そして夕べの話をそのままに話した

「勝負に出たか…
美沙は?
旦那ともう一度向き合い直していきたいか?
そうだとしたら俺の存在はもう失くしたほうが
絶対にいい…」

「ごめんね…涼…
私分からなくて…
好きなのは涼で…でも…だけど…」

言葉に詰まってしまう

「美沙…俺のことはまずいいから
自分自身の人生単位で考えたほうがいい…」

彼が私に優しく
そして少し悲しそうに微笑む

「涼……
少しだけ考えてもいいかな…
仕事はいつも通りするし
涼と一緒にいたい気持ちは変らないから…」

「お前がそうしたいならいいよ
俺はそれでいい」

重苦しい空気を避けるように
涼は私にとにかく少しでも食べて眠れと
ホテルのベッドで腕枕をしてくれた

目を閉じて
彼の胸に顔を埋める

彼の香り
彼のぬくもり

そしてそれ以上何も聞かない彼に
申し訳ないと
思いながら
いつの間にか眠っていた

目が覚めると
彼も眠っていた

私はその寝顔を見つめながら考える

あの人と別れられなかったのは
一人になるのが怖かったから?…

帰る所がある彼を一人想う気持ちだけでは
保てないから?…

彼の言葉…
笑顔…
今までの色んな出来事を
思い返し考えていた

私は何を守りたいの…

自分自身?

夫婦?

彼?

この二人きりの時間?

そしてそれぞれのその先には何があるの…


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