この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
35
第16章 35
母と父に関しては感情的になるだけ
無駄なんだと話をしていた
時々押し殺している感情に
ふと発狂してしまいたくなってしまう
きっと母も同じだろう
家では気に入らないことがあれば突然怒鳴り
病院や薬局で少しも待つことのできない父を
母と交互に宥めながら
半日を過ごす
動けるのに動こうとせず
自ら寝たきりのように一日を過ごす父には
床ずれができてしまっていた
「いや…寝返りうてるのに…
自分で動けるのに床ずれはちょっとまずいね…」
脳外科の先生が驚く
「いや…これじゃすぐに
寝たきりになっちゃうよ…お父さん!
デイサービスでも通わないと
家族のためにもですよ!」
先生に言われ
父はうなずいていた
「介護保険の申請をしてサービスを…」
先生や看護士さんにすすめられ
母とそうすることにしようと話しをした
家では母がどんなに言っても
私が言ってもお風呂や着替えもせず
怒鳴り寝たふりをして
月に2度ほどしか着替えや
入浴ができない状態だった
手続きを済ませ父の様子を説明し
両親の家へ話を聞きに市の職員
そして支援センターや施設の人が訪問する
通常保険適用の認定がおりてからの
サービス利用開始が一般的な手段だか
脳外科の先生から
家族への負担と父の衛生面や寝たきり予防のためにも
認定がおりる前に
見込みでのサービス利用をすすめられた
おおよその認定がおりるであろう
段階を話し合いで決められ
利用開始となる
「美沙!お前があんな奴らを呼んだのか!」
デイサービスを拒絶する父が
訪問のあとは必ず私を怒鳴る
「呼んだわけではないよ
デイサービスもお医者さんが行かないとって
言ってたからね…
そのためには訪問してこちらの様子を伝えないと
いけないんだよ…」
怒鳴られることにも
いつの間にか慣れていた
怒鳴られたあとに
穏やかに冷静に話をする私に母が
「ごめんね…美沙…本当に…」
と涙を流す
私はそれを見つめ
心のどこかに大きな穴が空いてしまったのかと
感じるほど
何も感じられなくなってしまっていた
そんな日は決まって
帰り道の車の中で
信号待ちをしてぼんやりしていると
涙がこぼれていたりしていた
「私壊れたくないな…
もう壊れちゃってるのかな…」
自分が苦しんでいるのかも
絶望しているのかも
前向きになっているのかも
分からなくなる