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第4章 依存

その日から数日
兄は学校やバイトを調整して
私の面倒をみてくれていた

「もしも…
もしもだけどね
お母さんが帰って来なかったとしたら
お兄ちゃんが学校辞めて働くから二人で暮らそう」

「大丈夫だから、美紗は学校に毎日行けよ」

兄が私に言った
兄も母が戻って来ない間不安だったんだろう

母がいない間は毎晩兄が一緒に眠ってくれた

普段は学校や部活にバイトと忙しかった兄とは
あまり一緒に過ごす時間はなかったけど
優しい兄が大好きだった

そんな中でも父は
夜私が寝たあとに帰宅し
朝目覚めるころにはいなかった

私はあの日のことを口に出してはいけないと
分かっていたから
父に聞くこともなかったし
兄も私に何も聞いてこなかった

ある日学校から帰ると
母がリビングに座っていた

「ごめんね…ただいま」

それだけ言うといつも通り家事をはじめた

私はほっとした
何も聞いてはいけないんだろうと
私もいつも通りでいた

その時は分からなかったけど
母はあの日父の会社で父と
父の愛人と揉めた

生活費も入れてもらえず
パートを続けあの家で
兄と私を養っていたのは母だった

そんな母が可哀想で兄は空いた時間
目一杯バイトをして母に生活費を渡していた

戻らなかった数日
遠く離れた実家の祖父母や知人に
相談し離婚も考えていた

私は何も知らなかった

でもその時以来
父と母が喧嘩をする声を聞いていくうちに
母の愚痴を聞くごとに
少しずつ事情を把握してしまっていた

ある日夜中に
怒鳴り声と母の泣く声に目が覚め
早く終わらないかと泣いていた
父が車で出掛ける音がした
気になってキッチンにいる母を見に行く

私が
「ママ大丈夫?」
と聞くと

母が
「なんでこんなことに…疲れた…
あなたさえいなければ今すぐ別れられたのに…
あなたさえ産まなければ…」

とうつむいたまま消えそうな声で言った
私は何も言えず泣きながら自分の部屋に戻った

歳の離れた兄弟
父の愛人
私が産まれる前から…

どうして私を作ったの?
どうして私を産んだの?

私はそのときから
父も母のことも憎いと思っていた

反抗することしかできなくなってしまった

自分自身が激しく落ち込むようなことがあると
いつもそんなことを思い出していた









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