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第16章 35


「俺さ…川崎にさ
どうしていつも自分を保って要られるんですか?
飲みに行くわけでも
遊びに行くわけでもないのに…
って聞かれてさ
いや…あるよちゃんと…
自分を保っていられるように
してくれるところがさ…
俺だって普通の人間だからなって
言ったらさ…
女の人ですか?って…
会ってみたいってさ…断ったけどな…」

彼の会社に長年つとめる
川崎君は彼とあまり歳の変わらない
幼なじみのような存在だと聞いていた
仕事で失敗をしていて
どうしようもなく塞ぎこんでしまった川崎君に
聞かれたときに話したという

「俺…誰にも言うつもりなかったけど
絶望のどん底から這い上がれない
あいつに聞かれてさ…
やっぱりあいつだけには這い上がってきて
ほしくてさ…
やけ酒してくさってたって何も変わらないんだから
そういう人を見つけたほうがいいって
励ましの意味でな…」

「そっか…
そうだね…」
私は黙って彼の話を聞いた

「他の誰にも何にも変えられないくらい大切な人が
見つかったってさ…
そう気付いたときにさ
多分俺は強くなったんだ…
守るものがないくらいのほうが人生楽で
おもしろおかしく行けるのかもなんて
くさってた時にはそう思ってたけどさ…
やっぱり違う
心の孤独感がないのって本当に温かくて幸せだ
それを失いたくないって
守りたいって何でも必死になれる」

彼の言葉を聞き
ぼんやりと考えていた

私も同じ…

だから離れたくない…

彼だけは失いたくない…


そう思ってしまうことが
人の道に反することなら
私は人でなくなってしまっても構わない

でも………

35歳が終わる頃
私はいろんな想いと葛藤していた…























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