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第17章 私の道
私の一日は5時に目覚め
シャワーを浴び
天気予報をチェックする
朝のニュースを流しながら
メイクをし洗濯や掃除を済ませ
7時半くらいに両親の家へ向かう
父と母と三人で朝食をとり
仕事へ向かう
父は食事中もその前後もほぼ無言だ
母の作るご飯にケチをつける程度しか
話さない
私は一日のはじまりをなるべく
明るく過ごせるようにと
母に話しかけ
父に話しかけ
トーストやシリアルを食べる
考えてみれば
三人の食事など記憶に一度もなかった
兄も加わり四人になることもほとんどなかった
母は毎朝私に前日の夜の父の様子や
テレビの話などを
よく話す
幼い頃の母と二人の食事は
ほとんど会話はなかった
いつも疲れて忙しくしていた母に
どうせ聞いてもらえないだろうと
子供心にあきらめてしまっていた
小学校卒業の時の制作で
産まれてからそのときまでの作文を
1冊の本にすることがあった
毎日のように宿題になる原稿用紙に書く作文が
嫌いでたまらなかった
「小さな頃の思い出は両親やおじいちゃんや
おばあちゃんや家族に聞いて書きなさい
写真もつけてください」
と先生がいつも言っていた
私は母にしか聞くことができなくて
それを作文にするには
不充分なことがすごく不満だった
写真は母が撮った私一人のものばかりだった
私は期日までに決めれた何百ページぶんもの作文を
書き上げることができなくて
先生に呼ばれた
「どうして家の人に聞いて書いてこないんだ?」
先生の言葉に答えが見つからず
黙っていた
結局他の皆よりもはるかに遅れて
指定されたページ数の半分にも満たない
確か
「私の生い立ちの記」
などと表紙に印字された
薄っぺらな1冊の本が出来上がった
中学にあがってから
小学校のときの教科書などと一緒に
処分してしまっていた
あれから家を避け
家族を避け
人を避け
自分自身の本音を避け
やがて孤独感に襲われ
自己嫌悪に陥っていた
でも今の私は違う
とりあえずは笑っておこうと
どんなに落ち込むようなことでも
下を向いて塞ぎこまず
空を見上げる
大きな雲がゆっくりと流れていく様子や
月の満ち欠け
星の輝き
雨の匂い
そして大きく深呼吸をすると
リセットされた気持ちになれる