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第17章 私の道

あれほど苦悩していた家族のことや家庭環境は
もう遠い遠い過去のことで
自分自身が産まれたことに
さほど理由などないのでは…と
それでいいと

理由なんかいらないと

ふとそう思う

自分と周りの人々が
少しでも多く笑い合い優しく穏やかな気持ちで
過ごせていることが何よりも幸せで

それだけで良いと思う


思い悩み
闇の底からずっと抜けだせずにいたときは
そんなことは少しも考えられなかった

一時笑っていても
また一人ぼっちの闇へと
引きずり落とされていくように感じていた

でもきっとそれは
自分自身の後ろ向きな気持ちが
そうさせていたのだろう

「お前は本当にすごいよ…
俺だったらもうとっくに親から逃げたかもな…
今じゃお前は笑って介護しちゃうんだもんな」
彼が笑う

後悔することを恐れ
自分自身が逃げることを許せず
父のことを憎んだままでいることが
一番辛かった

辛いと口に出してしまえば
その気持ちに飲み込まれてしまいそうで

とりあえずは笑っておこう

ある時から自然にそうなっていた

泣き疲れるくらいなら
笑い疲れるほうがいい

そう思う

「今に笑い皺ができそうでやだなぁ…」
呟く私に

「笑い皺なんてどんどん作れ!
皺だらけになったって大丈夫お前はかわいいよ
お前はかわいいおばあちゃんになるだろうな!」
彼が私の頭を撫でながら笑う

「涼…髪が薄くなったとしても
中年太りしても…
ふふふ…好きだよ」
私も笑う

彼は別居をはじめた

「いつ何がどう変わるかまだ正直分からないけど
とりあえずは一歩前進な!」
そう言っていた

何かが変わったとしても
変わらなくても

私の気持ちは変わらない

彼もそうであって欲しいと
心から願ってしまう

誕生日の前日仕事に行くと
篠原さんが大きな観葉植物をプレゼントしてくれた

「これ…私が欲しかったの!!
でも…こんな大きいの家に置けないですけど…」

「あはは分かってるよ!
美沙ちゃん観葉植物好きだって言ってたし
ここは殺風景だからここでみんなで育てようと
思ってね!」
そう言って
私のデスクの横に大きな鉢を置いてくれた








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