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第4章 依存
私を押さえつける彼の手が
首にかかっていた
苦しくてもがいたけど彼は夢中でそれに気付いていなかった
私は苦しくて苦しくて
彼を力一杯蹴りドアを開け転がるように外に出た
彼は車を降りて私に駆け寄る
「大丈夫か?」
別人のように優しく言った
私は彼のその豹変ぶりに寒気がした
「ごめん…
私もう本当に無理だよ
ごめんなさい別れてくださいお願いします」
私はアスファルトに土下座をするように倒れこみ
泣いた
「俺酔ってたんだよ…
アイツらがまた
あの話するからムシャクシャしてつい…」
「ムシャクシャしたら何をしても良いの?
私はあなたにあたったことも
あなたを責めたこともない
それはあなたが大切で一緒にいたいと思ってたから…」
彼は私を車に乗せようと抱えようとする
「やっ、触らないで!」
身体が拒絶する
それを見た彼はそこに力なく座り込むと
「本当にごめん…
でも自分でもどうしようもないんだ
自分で自分が許せない
でも美紗を失うのは嫌だよ」
「失うようなことを
わざわざしてきたのはあなただよ」
私は彼に冷たく言った
彼は泣きながら
「俺、もう自分で自分が分かんないよ
どうしたらいい?美紗が好きなのに…」
そう言って顔を上げると
「俺、別れるって言うなら死ぬ
死んだほうがましだ」
と言って私を睨んだ
怖いとも
死なないでとも
なんとも思わなかった
いっそ死んでくれたら…とも考えていた
でもなんだか全てが馬鹿馬鹿しくなってしまって
私は立ち上がって彼に言った
「今までたくさんありがとう
大好きだったけど
もう今は嫌い…
私はあなたとはもう帰れないから」
私はまだ寒い冬の夜
部屋着にサンダルのまま足早に駐車場から去ろうとしていた
「おいっ!その格好でどこ行くんだよ!
頼むから行かないでくれよ!」
彼が車に乗り込み私を追いかけようとしていた
私は暗闇に紛れて車が来れない細い道を走り
彼から逃げていた
もう二度と会いたくない
もう絶対戻りたくない
どれくらい走ったか分からない
喉かカラカラになって
咳き込んで立ち止まった
ポケットにはお財布が入っていた
販売機で温かいお茶を買ってベンチに座った
深夜の外の空気が久しぶりで
それを味わうように深呼吸をした
お茶を飲もうと
缶を傾け顔を少し上げると星がたくさん輝いていた