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第5章 救いの手
「携帯…最悪だ…」
更に真美が言った
「多分私にもかかって来てるよ、ゆうべから
知らない番号だから出てないけど何回かね…」
三人でため息をついてしまった
「俺にさ
美紗から連絡あったらすぐに連絡してください!
突然いなくなってしまって心配で
って言うから何かあったなって
そしたら美紗からあの電話だろ?
すっげ~腹が立ってさ
朝かけ直したわけよそいつに」
真美と私は黙って龍を見た
「ワンコールしないうちにすぐ出てさ
アイツ電話持ったままずっと待ってたぜたぶん
美紗から連絡来たか聞かれたから言ってやったんだよ
来たよ
お前に首閉められたってな
泣きながら助けてほしいって
真夜中に公衆電話から声震わせてな
だから俺が助けに行った
お前に美紗はもう二度と会わせてやらね~
会わせてほしかったら俺のとこに来い!ってな」
笑えなかった
「それは逆効果では」
真美が言うと龍は
「女に手出す奴なんて弱虫なんだよ
自分より弱いの分かってるからやるんだぜ
女じゃ手におえねぇ
だからそういう奴にはそんな自分より強くて怖い奴がいるって恐怖を教えてやるのが一番さ」
妙に納得してしまっていた
真美も良く分からないといった顔をしながら
うなずいていた
「ま、こっちに来たとしたって
全力で守ってやれるから安心しろ」
真美と私の肩を叩いて龍が笑うと
私達も笑った
龍のお父さんは堅気ではない
小さな頃から後継ぎとして育てられた龍に
怖いものはなかった
でもそんなお父さんの妻だった龍のお母さんは
生真面目な性格のせいか
心労やお父さんの女性問題と度重なる暴力に
気を病み壊れていってしまった
龍が18歳になる少し前に
嫌がる龍にお父さんは無理矢理刺青を入れに通わせた
逃げてもつかまり殴られ引きずられ
やがてあきらめたらしい
龍と龍のお母さんはその道を望んでいなかったけど
刃向かうことは不可能だった
龍までもがとお母さんは更に気を病み
通院していた心療内科の睡眠薬を大量に飲み
首を吊って亡くなった
龍はお父さんが許せなくて
縁を切ってほしいと自分から頼んだ
お父さんも妻を失ったショックもあったのか
それから連絡もとっていないと聞いた
龍はバイトをして貯めたお金と
人脈で飲食店を経営していた
龍は私が出会って来た人の中で
奥底に一番深い闇を持っていた