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第5章 救いの手
熱帯魚をぼんやり眺めていた
家にも小さな頃
水槽があって小さな熱帯魚を飼っていた
私は熱帯魚が好きで
近所のホームセンターに行き
お小遣いで数匹ずつ買い足して眺めるのが
好きだった
あの水槽はどうして空っぽになってしまったんだっけ…
目の前の大きな水槽に泳ぐのは
その頃欲しくてたまらなかった
高価で少し大きな熱帯魚だった
「ディスカスがたくさん
珍しい色ばかりだな…」
そのままうとうと眠ってしまった
気が付いたら朝だった
ドアをノックする音がして
開けると謙さんと龍が立っていた
「おはようさん!ゆうべ謙さんに聞いて来たけど
インターホン鳴らしても出なかったから
寝ちまったなって帰ったんだ」
龍が笑ってた
三人で近くの喫茶店で朝食をとって
部屋に戻った
謙さんがピンクの可愛い携帯を私に手渡し
「やっぱ女子はピンクでしょ!」
と言い
龍がすかさず
「早くあの天然に電話してやれ」
と言ったので真美に住所と携帯を持ったことを
知らせた
またインターホンが鳴る
謙さんがドアを開けると昨日のスーツの男の人達が
冷蔵庫を持っていた
その後ろから電気屋さんが洗濯機と乾燥機を運んで来た
「寮らしく家電は揃えてやらないとな」
謙さんが笑ってた
私は
「本当に何から何まですみません」
と頭を下げると
龍が
「らしくないね~」
と私をつついた
その日は一日中謙さんと一緒だった
ファミレスでの面接を近くの席で待ち
スーツを買いに行き
お店の掃除と前日の各店舗の集計と
仕入れの手配
広告の打ち合わせ
常に側に私を置いていた
もしかして
私が一人にならないように
連れて歩いてくれてるのかな…
申し訳ないな
そろそろ仕事しなきゃな…
そんなことを考えていると
謙さんが突然言った
「明日から美紗ちゃん仕事な!
ただしお店には出ないから」
「え?」
私がきょとんとすると
「昨日決めたんだ
お店の女の子じゃなくて
こっち側で働いてもらうから
よろしく!」
私は
「あっ、はい、よろしくお願いします」
としか言えなかった
「明日から忙しいから
今夜はゆっくりしよう」
謙さんはそう言って
再び車を走らせた