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第7章 生きるということ

後ろから私を抱き抱えるようにぴったりと
身体を寄せたまま謙さんが言った

「美紗…してて痛いか?」

「ううん、どうして?」

私が振り向いて聞くと

「入れるときにさ…
身体をものすごく強ばらせて
痛いような顔をするんだ…
だから俺痛むのかなって遠慮してた…
美紗はあそこ自体が小さいし
苦痛じゃかわいそうでさ…」

謙さんが途切れ途切れに言った

「あのね、痛くはないよ…
でも正直言うと中が気持ち良いって感じが
まだ良くわからないのかも…
痛くないから大丈夫だよ」

私はそれしか言えなかった

多分今までずっと私はそうだったんだろう…

入ってくるときや
入ってきたあとに
「痛い?」
と聞かれることが多かった

謙さんにはじめてのときのことを話せなかった
多分それを聞いたら
私を求めることができなくなってしまうと
思ったから…


「それとさ
仕事の話ね!明日から会社のほうが
少し忙しい時期に入るから
俺がいないときは横山に頼むから」

「分かったよ
でも私は一人でも大丈夫だよ」

私が言うと

「だめ!姫に何かあってからでは困るんだから」

そう言って謙さんが笑った


翌日謙さんからリニューアルするお店の
開店資金を預かった
そんな大金を見たのははじめてだった

「ちょっと挨拶に行かないといけないから
300万だけ包んで持ってあとは口座に入れて」

私は言われた通りにする

挨拶に向かったのは
小高い住宅街にある大きな一軒家だった
広い玄関から脇にある
事務所と書かれたドアを謙さんがノックする

中に入ると広々とした部屋に
数人の男性がいた

「おぉ、ひさしぶりだな」

中央の身体の大きな男性が謙さんに言った

「お久しぶりです
今回は彼女があの店を引き継ぐことになったので
挨拶に連れて来ました」

「こんな若い子で大丈夫なのか?
まぁ、なんかあったら若い奴行かせてやるか…」

「よろしくお願いします」

私は頭を下げた

謙さんが現金の入った包みを渡す
私はなんとなく察しがついたので
ただ黙ってそこに座っていた

謙さんとその男性の話が終わり
挨拶をして車に乗り込む

「高澤さんは親戚なんだ
死んだ親父の組を継いでる
俺は就職したくて家にも寄り付かなかったから…
今は何かのときは面倒みてもらうかわりにね…」

そう言って煙草に火をつけた

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