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第8章 揺れる心
「美紗ちゃん…
謙さんは美紗ちゃんが大好きだと思うよ
だけどこの間ここで奥さんと電話でもめててさ…
そのあと話をしたんだけど
離婚したいと言ったけど
子供に二度と会わせないのが条件だってさ
って…すごい悲しそうに言ってたんだよ
龍に聞いたか?
謙さん奥さんとは話もろくにしないけど
子供だけは別だからって…」
私はただただ横山さんの話を泣きながら
聞いていた
「美紗をかごの中の鳥にはしたくないな…
ってさ…
俺それ聞いてさ
正直かなり前から美紗ちゃんのこと気になってたし
じゃぁ俺にください!
って言いたかったけどさ…」
横山さんが見たことのないような顔で私を見た
「俺さ…
借金返し終わったらもうすぐ
地元に戻るつもりなんだ…
美紗ちゃん一緒に行かないか?」
「えっ……」
私は何も言えなかった
「時間はまだあるから考えてみて欲しいんだ
本当は今すぐ俺のものにしたいけどな…」
そう言って横山さんが事務所を出て行った
しばらくして戻ってきた謙さんが
私の顔を見て
「美紗泣いたのか?」
と聞いた
私はまた何も言えなかった
謙さんもきっと苦しんでいるんだな…
子供をあんなに大切に思っている謙さんが
離婚の話まで切り出して…
私には何も話してくれないんだな…
なんだか少し謙さんが遠くなった気がした
私は自分の中の迷いから抜け出せず
どうしたらいいか分からず
逃げたくなってしまっていた
素直になれなくなってしまった
お店が終わると謙さんが迎えに来る
「今日はお店の女の子たちとご飯行ってくるから」
それを言い訳にして
謙さんを先に帰すことが多くなった
そのうち一人でバーに寄るようになった
飲めないお酒を無理矢理飲んで
タクシーで帰ると謙さんが待っている
謙さんは何も言わなかった
ある日バーで酔い潰れてしまい
帰ってこない私を心配して
謙さんが何度も電話してきた
私は電話に出なかった
朝方私を探していた謙さんがバーに来て
私を連れて帰った
シャワーを浴びて出ると
いつものようにドライヤーで私の髮を乾かすと
「美紗…どうしちゃったんだ?
誕生日の日からおかしいぞ
俺に不満があるのか?」
と私の手を握って言った