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第9章 決心
立ち止まって振り向いた龍が言った
「謙さんさ…
後ろ髪引かれながら帰るたびに
お前にそう言われたかったんだろうな…
そんなに必死になるお前なんて
滅多に見れないもんな…
お前の考えてることが分からないって
どうしたらいいかって謙さんが
いつか聞いてきてさ
俺うまくやってると思ってて
深く考えてなかったから
美紗はいつもそんな感じだよ
気にしすぎとか言ってたんだよ…
美紗は謙さんと一緒になりたくはないのか?
謙さんは考えてたぞ
お前との先のこと…」
龍に言われてどうしようもないくらい
胸が痛くて苦しくなった
パニックに襲われそうで
息が荒くなってしまう
「謙さんが好きだったけど…
お父さんと重なるときがあると…つら…」
ハァハァと呼吸が荒くなってしまう
「分かった…分かったから美紗
もう話すな…今は話さなくていいから」
龍が私の側に戻り心配そうな顔をする
「ごめん…」
涙が止まらなかった
龍が私の気を反らすかのように
何気ない話を続ける
私はその龍の優しさと必死さに
また涙が溢れて
でも笑ってしまった
「美紗は笑ってる顔が一番かわいいな」
龍が安心した顔をする
「龍…寝てないでしょ?
もう朝だから帰って休んで…
もう大丈夫だから…」
私がそう言うと
「分かったよ
でもお前あとで検査だからな
念のため胃カメラもだって」
龍が私の肩をポンと優しく叩いて出て行った
「あっ、横山さん…」
言おうとしたそのとき横山さんが
静かに入ってきた
「順番待ちしてたら朝になっちゃったよ
美紗ちゃんは人気者だから…
眠いよね…」
横山さんが優しい笑顔で横に座る
「あの……
少し眠りたいんだけど…
隣に来てほしい…」
思わずそう言ってしまった
自分自身に驚いた
でも
その時の私はどうしても
その胸にしがみつきたかった
横山さんが一瞬驚いた顔をして
ベットに入ってくる
「ん」
と一言だけ言って
腕枕をしてくれた
私はそのたくましい腕の中で
「ごめんなさい…」
と言ったきり
次の言葉が見つからないまま
すぐに眠りについてしまった