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第9章 決心

目が覚めると横山さんが私の顔をじっと見ていた
恥ずかしくて背中を向けてしまう

「寝てなかった?」
私が聞くと

「うとうとしてたよ
夢なんじゃないかって起きるたび確かめてた…
俺が身体を動かすと俺のシャツをぎゅっと掴むんだ
それがたまんなくてさ…見てた
そろそろ看護師さん来るから座るよ」

横山さんがゆっくりベットから身体を起こす…
私はその時思った

この人にずっと一緒にいてほしい

仕事で一緒にいる時間が長かったから
強面の見た目とは正反対に
案外子供や動物に好かれることや
涙もろいこと…
二回離婚をしていること
借金のこと…
そんな横山さんに心がひかれていた

「あのさ……」
椅子に腰をおろした横山さんが
私の顔を覗きこむようにして言った

「これで言うの最後にするからさ…
美紗ちゃんを追い詰めるのも嫌だしな…
俺さ…
もう女なんてってあきらめてたんだ
自分が女をみる目がなかったのかもしれないのにな
それに俺にはダメなところもたくさんある…
でもどうしても美紗ちゃんと一緒にいたいんだ
俺と一緒に来てくれないか?」

私はしばらく目を閉じた

自分の心の深いところにある
本当の気持ちが知りたかった
でも分からなかった

ただひとつ分かっていたことは
横山さんと
ずっと一緒にいたいと思ってしまっている
私がいること…



「ありがと…
私も一緒にいたい…です…」

私が言うと横山さんは
ほっとしたように笑っていた

その日は診察と検査をして帰った
食事もろくにとらず
お酒を飲んでは吐くを繰り返していた私の身体は
胃潰瘍になってしまっていた

「部屋に送るのは嫌だから
俺の家でいい?」

横山さんがそう言ったのでうなずいた

「朝…謙さんが帰るときにさ…
俺こんな中でも
とぼとぼと家に帰っていくあの人を見て
腹が立って言ったんだ…
このあとのことは俺に任せてくださいってさ
謙さん夕方まで戻れないからよろしくって
言ってたけどさ…
俺はもう帰せないよ…いいのか?」

私は黙ってうなずいた


これでいい…
こうするしかない

そう思っていた






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