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第11章 気持ちの変化
結婚生活が8年過ぎた頃
母から明け方に何度も電話が鳴った
寝ぼけ眼で電話に出ると
「お父さんが救急車で運ばれて…
心筋梗塞なんだって…これから緊急手術なんだけど…」
取り乱す母の声に
私は家を飛び出していた
病院まで一時間かかる真っ暗な真冬の山道が
とてつもなく長く感じた
兄から電話が入り兄も病院に向かっていると
言っていた
死ぬのかな…
胸がモヤモヤと
そしてドキドキしていた
他には何も感じなかった
病院につくと家族の待ち合い室で
母が兄と一緒にいた
「夜中に苦しいって言い出してね…」
母が一部始終を説明する
手術が終わったと
ICUに通される
管を沢山つけられ
ポンプのようなもので
心臓の動きを保たせているという
ベットに横たわる何年かぶりに見た父は
痩せて小さくなっていた
「悪いな…こんな時間に…」
父が力なく言った
詰まった心臓の血管の処置は
無事終わったと
命には別状はないだろうと
医師から説明を受ける
少しほっとした私がいた
実家に母を送った
「あれから3年くらいしてまた脳梗塞をやってね…
タバコもやめないし相変わらずな生活してるから…」
ため息をつきながら母が言った
車の免許もない母が毎日病院へ通うのは
無理だろうと
私はパートを休み毎日母と病院へ行った
経過は順調で後遺症もなく
2週間と少しで父は退院した
兄から入院費を払ってほしいと
言われているから半分出して欲しいと言われ
私は父にお金を渡した
家に戻ると入院費を払ったことを説明した
彼は私がしたいように
してあげるといいと
言ってくれていた
慢性の心不全
狭心症
多量の薬がこの先ずっと必要なこと
水分制限
心臓の機能が一部壊死しているからと
説明されていたけど
退院後数日後には
以前と変わらず毎朝出掛けて夜まで戻らないと
母が言っていた
私は好きなようにしていれば良いと
思っていた
後々になってこの時の自分自身をはじめ
父や母を
責めてしまいたくなるような出来事が起こるとは
想像もつかないでいた…