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第11章 気持ちの変化

私は幼い頃から父や母に
本音をぶつけることができなかった

言っても聞いてはもらえないと
あきらめていた

そのせいか深く人と向き合うことが苦手だった

家族でさえこんななのだから
他の人となんて分かり合うことなんて不可能だと
そう思っていた

謙さんのときもそうだった…
もっと私の気持ちを伝えることができていたら
何かが変わっていたのだろうか

些細なことで疎ましくさえ思ってしまう
夫のことを私は本当に愛しているんだろうか…

彼は相変わらずベットに入ると
私を求めていた

あんなにも興奮した最初の濃厚なキスでさえ
長くて面倒だと思ってしまった時もあった

きっと私の中のモヤモヤを
彼にきちんと伝えていたら
こんなふうに想いがすれ違うこともなかったと
分かっていたけど

精神的に決して強くはない
私に依存しきった状態の彼には
言えなかった

実家から自宅へ帰るとき
信号待ちの状態で突然息苦しくなり
運転できなくなったことがあった

すぐ道路脇に車を寄せて休んでいたら
通りかかったパトカーに声をかけられ
気分が悪いと説明すると
救急車の手配をされてしまいそうになり
どうにか説明して夫に電話をして
迎えに来てもらった

血相を変えて車を飛ばしてきた彼は
私が抱えている病気のことを知らなかった

症状がおさまったあとに
説明すると
彼はますます心配ばかりするようになってしまった

私は彼に
「心配しすぎだよ…
あまり甘やかさないで
もう大丈夫なんだから」

と笑って言っていたけど
彼は不安をぬぐいさることができていなかった

朝仕事に出掛けて数時間後にはメールが入り
お昼休みには電話がくる
帰宅前に電話が入り
何時くらいに帰ると報告がある

実家に泊まっているときも同じだ

アルバイトに出た日は
無事に実家についたら電話かメールをしてほしいと
言われていた

私は監視されているようで
若い頃に同棲していた彼と重なってしまって
自宅に帰る足が少しずつ遠のいてしまう

そんな中
母までもが脳梗塞で入院してしまう

幸い麻痺も残らない
軽い小脳梗塞だったが
MRIの結果おそらくほぼ無症状に近く
長い期間を経てあらゆる場所に起きていたという
小脳梗塞の跡も見つかった

母と父は専門の別々の病院へ入院となり
私はふたつの病院へ通うこととなる






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