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第11章 気持ちの変化
「や~休みだったのにすまないね
でもこの席は美紗ちゃんにお願いしたかったんだ」
古くからの常連だと聞く鈴木さんが言う
「仕事とはいえ他の子と違って
余計なことは言わないし
絶妙な気遣いができるんだよ美紗ちゃんはさ
それに色気がある!」
一件目の料亭でホロ酔いになった鈴木さんが
上機嫌で私の肩を叩く
5人の席に私とママが付く
「美紗ちゃん鈴木さんが飯島さんお願いって…」
ママが小声で私に言う
5人の中で一番若く
おとなしそうな彼が今日の接待の主役だ
私は隣に座ると名刺を渡し
挨拶をする
「どうも…俺酒は飲まないから
適当でいいよ」
と彼は優しく私の耳元で囁いた
長身に尖った広い肩幅が目立つ
綺麗な顔立ちの横顔に
一瞬私の視線が止まる
はじめて会ったのに
なぜかずっと前から知っているような
不思議な感覚を覚えた
年配のお客さんたちとママは
「若いもの同士あとは仲良くしてね」
と茶々を入れる
鈴木さんたちは
「大事なお客さんだから」
と彼に気を使う
「本当にやめてくださいよ
僕は接待なんてなくても大丈夫ですから」
彼はしきりに言っていた
数時間後には
飯島さん以外の4人はママを囲んで
賑やかになっていた
隅の席に私と飯島さんは2人並んで
座っていた
「俺こういうの苦手なんだ…」
お酒を一滴も飲めない彼にとっては
接待とは思えない席だろう
たわいもない話を私たちはしていた
同じ地元の年が2つしか変わらないもの同士
会話が弾んだ
私は彼のほうが年上かと思っていた
彼も私を年下だと思っていたと言う
そして彼が言った
「俺さ…なんて説明していいか分かんないんだけど…
美紗さんに会ったとき
どっかで会ったことあると思ったんだ…
でもそうじゃないような…」
「あっ!
それね…私も思ったの本当に…
懐かしいような不思議な感じがしたの」
お互いなんとなく首を傾げて
笑いあった
帰り際また会いたいと
強く思ってしまっている自分がいることに
驚いていた
その日から
彼のことばかり気になるようになってしまっていた…