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第12章 蜘蛛の糸

「ちっちゃい手だな…
か細い指して…
そんな小さい体でお前は頑張ってるんだもんな…」

私は「美紗さん」ではなく
「お前」と自然に呼ぶ彼に
なぜかまたドキドキしてしまっていた

「からかわないでよね
これでも立派な大人だし
飯島くんよりお姉さんなんだから!」

照れ隠しを必死にする

「美紗姉さん!涼太どう思います?
コイツ嫁を抱かずにデリヘルなんかで
抜くんですよ!」

「やめろよお前!」

「だっておかしいでしょ
女を感じないとか贅沢言うんですよコイツー」

酔いが回って饒舌になる友達に
みんなが興味本意で色々たずねる

「デリヘルってどんなの来るのー」

「色男だからやらせてもらえるだろー」

「いいなぁ遊ぶ金ある奴はー」

私は黙って笑って聞いていた

「美紗姉さんやきもちやかないんすかー」
友達に聞かれ

「男の子はそういう生き物ですから」
と笑って答えていた

私は結婚している彼が
お金で割り切り
ストレスや性欲を発散させているんだろうと
それくらいにしか思わなかった

「でも涼太くんはね…
美紗姉さんに会ってから
自粛しちゃってるみたいですよー
美紗姉さんエロい顔と体してるもんなー」
友達がいたずらに言う

「おい!いい加減にしろよ!
もういいからこっちはほっとけ!」
彼は苦笑いをしながら
私に謝ると

「今このタイミングで言うのも
どうかと思うんだけどさ…
明日の昼間会えないかな」

と彼が耳元で言った

「えっ?
本当に?まさにこのタイミングでのお誘い?
えっ?私ダメだよ…」

笑いながら私が言うと
彼は急に真面目な顔をして言った

「何かあっただろ?
でもここじゃ言えないだろ?
俺気になってもうどうしようもないんだ
だから明日の昼間…」

いつも笑っているばかりの
彼の真剣な顔に断る言葉も浮かばなかった

「父の病院があるから…お昼くらいでもいい?」
私はそう答えていた

お昼に私の実家の側の海の駐車場で待ち合わせをした

その夜はドキドキしながらも
深く長い眠りにつけた

いけないことかな…
いけないことだろうな…

やっぱり断ろうか…

朝から何度も考えていた

でも彼に会いたい気持ちは
どうしても押さえられなかった…





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