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第12章 蜘蛛の糸
「店でつまみも全然手つけないし
そんなに細くて拒食症とかかと思ってたけど
違うんだな良かった…」
彼が私を優しい眼差しで見つめる
「少食なんだ…あとなんかあると
食べれなくなったりするから…」
と正直に話した
「じゃぁ俺とは食えるってことだな!
食え食え~
小豚になっちまえ!」
と言って彼が笑う
食事を済ませ車に戻ると
駐車場へ戻る
平日の午後の海辺は散歩する人々がまばらに
行き交っていた
「散歩!」
彼は車をおり助手席に回ると
「さぁ姫!どうぞ!」
と笑ってドアを開ける
「慣れてるねーさすがだよ」
私が笑って言うと
「こんなこと女に生まれてはじめてしてやったわ!」
と彼が笑う
手を繋いで海辺を歩く
「海好きって言ってたからさ
なにかあったときとか一人でも行くって
言ってたから
今日は一緒にと思ってさ」
浜辺に腰を下ろして彼が言った
きっと
私に興味をもってくれて
彼は私の全てを知りたいと思っている…
お店での彼もいつも真っ直ぐ私を見てくれていた
私はその彼の目に見つめられると
身動きが上手にできなくなるくらいだった
私は彼なら
笑いながら聞いてくるのではないかと
彼なら正しい答えに導いてくれるのではと
なぜかそんな風に考えていた
「いっぺんにじゃなくていいから…
まず昨日泣いてたこと話して」
彼が私の手を強く握る
私はその繋いだ手を
自分のほうへ引き寄せて
もう片方の手でさらに包み込むと
大きく息を吸って
ゆっくりと話をはじめた
夫との出来事
その出来事が過去の出来事を思い出させ
自分がどうしたらよいか分からなくなっていること
お店のことも
どうしてそこまでお金が必要なのかを聞かれ
両親のこともありのままを話した
聞かれると答え
説明をし
何時間も時間が過ぎていた
彼はひととおり話を終えた私に言った
「9年結婚生活してて
それでもその一度で旦那が信用できなくなった?
それとも怖いだけ?」
私はしばらく考えて答えた
「きっと…
いつも過去の男の人との
悪い思い出ばかり引きずって
男の人なんてみんな結局同じなんだって
たぶん心のどこかで思ってたんだと思う…
だからいつも何かあるとほらやっぱり…って
あきらめて気持ちが離れて
すぐに別れを告げてたから…」
言いながら涙が溢れてボタポタと流れてしまう