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第12章 蜘蛛の糸
「なぁ…
俺がその十字架一緒に背負ってやる
捨てろって言われたとしても
捨てたいって思っても
捨てられないんだろ?
それなら俺が一緒に背負ってやるから…
どんな関係だっていいよ
俺はお前をほおっておけない」
彼はそう言って私の肩を強く抱き寄せた
私は彼の肩にもたれて泣いた
嬉しくて
悲しくて
悔しくて
幸せで…
彼がぽつりぽつりと話をする
「初めてあの店に行く前に
あの人がさ…お前を絶賛してたんだよ
おじさんキラーだとか
色っぽいとかそれでいて素直で純粋なんだとかさ
見事に騙されて通いつめてんのかってさ
どんな悪い女なんだって
そう思って行ったらお前がいた…」
しばらく黙ってまた話をはじめる
「なんでか良く分かんないけど
初めて会った気がしなかったのと
かわいい人だなって
気になって仕方なかったんだ
俺そんなのはじめてでさ…
どんなに長い時間話をしてても
少しもボロが出ないし
それは頭がいいか
嘘がないからなんだろうなとかさ…
あれから朝起きて歯を磨くときに
毎朝お前の笑った顔が浮かんで
仕事で一息ついたときに
またお前ことが浮かんでさ
なんでだよ!って舌打ちしたりしてな…」
私の肩を抱いたまま
ゆっくり優しく髪を撫でながらまた話をする
「家ではもう二年以上やってないんだ
俺はたった一年で色んな意味で変わり果てた嫁さんを
女としては見れなくなったし
アイツは自分と金が一番みたいだからな
それが分かるから俺も大事にはできない
喧嘩するたび距離ができて壁ができて
俺は家に寄り付かなくなってさ…
自分でするのも嫌だし
時間と金はあったから軽い気持ちで色々さ…
遊んでたんだけどさ…
お前のこと気になってからは
他に興味もなくなっちゃってさ…」
そして彼が遠くを見つめてしばらく黙ってから
言った
「会社も大きくなって年も年だしそろそろ結婚は?
なんて周りに見事に流されてさ
その時期に付き合ってたのと
結局どの女でもある程度一緒にいれば
みんな同じだなって
相手のこともよく分かんないまま結婚してさ…
一年しないうちに夫婦関係は破綻してたよ
子供もいない
あぁ…失敗したなぁ
って思ったけど男としての責任もあるしな…」
彼が眉間をしかめ
深くため息をついた
こんな顔は見たくないな
私はそう思うと彼の頬にそっとキスをしていた