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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
和泉はただふらふらと、虎徹を探し家をさまよう。鍛冶場の方から何か音がするのに気付くと、慌てて外へ駆け出した。
鍛冶場を包む熱気を生み出すのは、緑色の炎を纏う鉄。和泉と同じぐらいの丈はある巨大な機械の中心で、騒々しい音を立てハンマーがピストンする。白熱灯のように光る鉄は叩かれるたび、耳を突き抜けるような高い金属音を響かせ、火花を辺りに散らしていた。
「虎徹」
中には入らず、入り口で呼び掛ける和泉の声は機械と鉄にかき消されてしまう。が、気配を感じたのか、虎徹は機械を止め振り向いた。
「和泉、どうした? ちょっと待ってろ、今行くから」
まだ赤い鉄を慌てて置こうとする虎徹に、和泉は首を振る。
「あ、いいの! この前は仕事してる虎徹見られなかったから、今がチャンスかなって。ねぇ、ここから見ててもいいよね?」
「そんなところじゃなくて、もっと近くでもいいぞ?」
「ううん。だって鍛冶場は神聖だから女人禁止なんでしょ? 中暑いし、ここからでいいよ」
和泉が話すのは、以前鍛冶場を見せた時に虎徹が教えた豆知識である。だが妙に遠慮がちな和泉に、虎徹は違和感を覚えた。