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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
しかし、半端なまま鉄を放っておく訳にもいかない。ひとまず和泉の望むまま、虎徹は作業を続けた。
作業は繊細なものだが、傍目からみれば単調である。長い棒の先についた鉄を炎で熱し、ハンマーで叩く。時たま延びた鉄を半分に折って重ね、また叩いていく。折り返し叩けば、鉄はより粘り強くなる。不純が散りゆく光景を眺めながら、和泉は思う。力加減を間違えれば、全てを壊してしまうこの作業。それを苦とも思わず愛する虎徹だからこそ、和泉も救われたのだと。
しばらく眺めていると、虎徹は再び機械を止めて頬に伝う汗を肩で拭う。そして和泉に声を掛け、鍛冶場の外へ向かった。
「休憩だ、ついてこい」
虎徹は外にある蛇口をひねると、喉を鳴らして飲み、挙げ句の果てには頭から被る。水に濡れた姿は、まるで水浴びしたライオンのようだった。
そして首を振り雑に水気を切ると、近くに置いた丸太に座る。和泉は隣にしゃがむと、虎徹を見上げて訊ねた。
「ボクに気を遣って、休憩にしたの?」
「うんにゃ、違う違う。作業中は熱いだろ? こまめに休憩して水分取らなきゃ、脱水症状起こしちまう。取らなきゃならない休憩だ」