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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
そして時間を忘れるまで仕事に打ち込み、腹の虫が騒ぎ始めた頃。虎徹は一度鍛冶場から自宅に戻り、台所に向かう。
「……ん?」
冷蔵庫を開けば、そこには和泉のために作っていた朝食が、そのまま残っていた。だが和泉は、ご飯を食べると言い残して戻っていったはずだ。虎徹は首を傾げ、和泉の名を呼び部屋まで向かった。
「和泉ー?」
だが、部屋に和泉の姿はない。トイレや風呂場にも、気配はない。虎徹は慌てて家の中や近辺を探し回るが、和泉の姿はどこにも見当たらなかった。
「和泉! 和泉!?」
虎徹の記憶では、和泉は着の身着のまま飛び出してきたため、財布すら持っていない。買い物などでどこかに出掛けたとは、考えにくかった。過ぎるのは、最悪の予感と不安。入れ違いになった事を期待して家に戻るが、やはり中に人の気配はなかった。
代わりに見つけたのは、落ちていた携帯。虎徹に人の携帯を覗く趣味はないが、今は緊急事態である。手がかりを探そうと乱暴にタッチすれば、画面が光る。そして表示されたメールの内容に、虎徹は予感は現実だったのだと確信した。