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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
「俺を頼れって言ったのに……!!」
虎徹は思わず携帯を床に叩きつけそうになるが、それを抑え拳を握り締める。そして乱れる心を抑えようと深呼吸しながら、携帯をテーブルに置いた。
(……違う、俺がもっと和泉を見ててやれば良かったんだ。向こうがこういう脅しをする事も、和泉がそれを聞いてどう感じるかも予想出来たはずだ。俺がもっと、あいつの不安に寄り添ってやるべきだった)
和泉がここから出て向かったのは、菊の元。和泉は虎徹の身を案じ、自分を犠牲にしても守ろうと消えたのだ。
(――落ち着け、なんの準備もなく一文字の所へ乗り込んでも、和泉は助けられない。解決するには、『武器』がないとどうしようもないんだ)
虎徹はすぐに鍛冶場へ駆け出し、先程まで打っていた鉄を手に取る。今はまだ鉄の棒でしかないそれを、虎徹は刀へと変える事が出来る。そしてそれだけが、虎徹の突破口だった。
虎徹は、再び熱気の舞い上がる火事場へ篭もる。寝食も忘れ、ただひたすら打って鋭さを増していく刀は、虎徹の内で燃える狂気をも孕んでいるようだった。