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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
やがて戻ってきた菊は、今までと少し様子が違っていた。誰も通さなかったこの淫靡な部屋に、和泉の見知らぬ屈強な男を一人伴って現れたのだ。
「……誰?」
普段の和泉なら、あられもない姿を見られたら、怒り、戸惑い、泣いただろう。しかし無限に続く快楽地獄の中で、そんな感情は沈んでいた。玩具の刺激で緩んだ頭は、ひとまず抱く大きな疑問だけを言葉にした。
いかにも悪人、といった面構えの男は、背格好や体格が虎徹に似ている。彼は和泉に顔を近付け無遠慮に観察すると、軽く溜め息を吐いた。
「ああ、確かに旦那の言う通り、これはつまらない女だな」
男の言う『旦那』とは、菊の事だろう。つまらない女、という評価に、和泉は眉をひそめる。嫌だと抵抗すれば無理矢理手中に収めるくせに、いざ手に入れれば文句を言う。理不尽な事この上なかった。
「つまらないから……ボクをこのおじさんに下げ渡すの?」
誰も入れようとしなかった部屋に人を入れたのだから、それには理由があるはずだ。だが菊は鼻で笑い、和泉の予想を一蹴した。
「まさか、有り得ない。なぜ僕が、自分のものを人にくれてやらなきゃいけないんですか」