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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
 
 だが、男は気付いていない。和泉が壊れたスピーカーのような嬌声をあげるたび、メモを強く握り締めている事に。指先に残った僅かな意志は、乱暴に種を植え付けられても、摘み取られずに残されていた。







 柄物のシャツに、着崩したスーツ。金のアクセサリーをごてごてと付けた人相の悪い男達が、招かれざる客を囲む。

 その男の持つ空気は堅気だが、作務衣に覆われた屈強な肉体はヤクザとも渡り合える質の良さである。そして、左手に握るのは日本刀。鞘に収められたそれが本物かどうかは分からないが、暴れられれば厄介である事に違いはない。いくらここがヤクザの巣窟と言えど、組員達は、無駄な揉め事で警察へ介入される隙を与えたくはなかった。

「皆さん、ご苦労様です」

 緊張感の走る応接間に、冷静沈着な菊の声が響く。菊は招かれざる客――近藤虎徹の前に立つと、うやうやしくお辞儀した。

「こんにちは、近藤さん。本来ならアポなしでの訪問はお断りしているのですが、他ならぬあなたの来訪です、歓迎しましょう。それで、本日の御用向きは?」

「……聞かなきゃ分からないか? 和泉を返してもらいにきた」
 
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