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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
菊は苦笑いを浮かべ、両腕を前に組む。紳士の皮を被って吐く言葉は、至極真っ当なものだった。
「返せ、と言われましても、和泉は物ではありませんよ。あの子の帰るべき場所は自宅、そして保護者の元です。あなたはもうご存知でしょう、僕は彼女の母親と内縁関係に当たります。どちらの元で過ごすかを法的に考えれば、答えは明らかだと思いますが」
「保護者だって、子どもにひでぇ仕打ちをすれば親権を取られるぞ。和泉は物じゃない? その言葉、そっくりそのまま返してやる」
「困りましたね。事を大きくして警察沙汰になれば、好奇の目に晒されるのは和泉本人ですよ? 人の口に戸は立てられません、必ずあの子は、嫌な思いをします」
「だから一生家ん中に閉じ込めて、お前の人形にしようってか?」
「……ここで話していても仕方ありませんね。和泉も加えて、三人で話しましょうか」
菊の提案に、虎徹は内心驚く。まさか菊から和泉を交渉の場に呼び出してくるとは思わなかったのだ。
(いや、逆に考えれば、和泉が俺の元へ帰るはずはないっていう自信だろうな。それだけ、和泉をコントロール出来るつもりなんだろう)