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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
夢でも心地良かった虎徹の温もりが離れ、和泉は床に体をぶつける。和泉を支えていた虎徹は腕を血に染め、その場にうずくまっていた。
「あ……」
鮮血の生温さと匂いに、和泉は思い知る。目の前に広がる絶望が、紛れもなく現実だと。
「――いやあああぁぁっ!!」
和泉はうずくまる虎徹に縋ると、泣き喚く。
「いやだ、虎徹死なないでっ!! 虎徹が死んじゃったら、ボク生きてけないよっ!!」
「和泉……俺は大丈夫だ、落ち着け……っ!」
「大丈夫じゃないよ、血が……止まらない!」
和泉は自身が汚れるのも構わず、虎徹の腕を押さえる。だが菊が和泉を虎徹から引き剥がし間に入ると、虎徹のこめかみに銃口を突き付けた。
「やめてっ、虎徹を殺さないで!! ボク何でもするから、だからっ!」
和泉は菊のスーツの裾を引き、真っ青になりながら懇願する。だが、虎徹から出てきたのは、和泉と真逆の言葉だった。
「俺を殺したきゃ、殺せばいい」
「虎徹!!」
「今日俺が和泉を連れて戻ってこなきゃ、俺は殺されたものだと思って捜査してくれって、知り合いの刑事に頼んでる。もちろん、和泉の保護もな」