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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
「賢明な判断ですね。最悪の事態になっても、和泉だけは確保しようという腹ですか」
「……もっとも、お前はそうでなくとも俺を殺すつもりはないみたいだけどな」
虎徹の言葉に、菊はぴくりと眉を動かす。そして銃を下ろすと、紳士ではない、傲慢で自信家の表情で笑いを零した。
「あなたは、脳みそまで筋肉という訳ではないようですね。はっきり言いますが、僕は人間としてならば、むしろあなたに好感を抱いていますよ」
「嬉しくねえ褒め言葉、ありがとさん」
虎徹は溜め息を漏らし、体を起こす。菊の言葉にうろたえているのは和泉の方で、出した手を引っ込める事も出来ず、菊を見つめていた。
その視線に気付いた菊は、振り返ると和泉の頭に手を置く。それは和泉が今まで接してきた『兄』と同じ温もりで、ますます和泉を混乱させた。
「先週和泉が飛び出した時、僕が一番懸念したのは和泉が壊される事でした。この子は人懐こく、そして無邪気です。悪意のある人間が手を掛ければ、すぐに壊れてしまう脆さがあります。ですが、戻ってきた和泉は、その無邪気を欠片も失ってはいませんでした」