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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
「当たり前だ、こいつを傷つけるような真似なんて出来るかよ」
「いいえ。常人は、厚意のつもりで手を加え、余計に乱してしまうものです。美しいモノとは、磨き方も知らない素人が、下手に手出しをするものではないんですよ」
虎徹はたまたま目に入った帯を拾い、それを傷口に固く巻きつけ止血しながら話を聞き流す。菊の勝手な持論などに、虎徹には一切興味がなかった。
「ですがあなたは、僕が望む和泉を仕上げました。まあ、僕自身の手で完成させられなかったのは腹立たしいですが。僕は美しいモノが好きです。そして、美しいモノを創造出来る人間も好きです。あなたの感性は、きっと僕に似ている。生かす価値はあると判断しました」
「に、似てなんてないもん!」
菊に反論したのは、虎徹ではなく和泉だった。
「虎徹は自分勝手な振りしてるけど、いつもボクを一番に考えてくれるもん。菊さんは言う事ばっかり綺麗で、自分のやりたい事しかしないじゃん!」
「僕が、嫌いですか?」
「恩があるのは確かだよ。それは何があっても変わらないよ。でもボク、菊さんじゃなくて虎徹が好きなの。虎徹以外の人に抱かれるのは、嫌……」