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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
和泉は菊の横をすり抜け、虎徹の元へ向かう。血が滲む帯を見ると暗い表情を浮かべ、虎徹の背に腕を回した。
「ごめんね、ボクのせいで怪我して。本当に、大丈夫なの?」
「殺す気なら、もっと確実な所狙ってるだろ。そりゃ痛いが、死ぬ程じゃない」
「でも、利き腕だよ。後遺症残ったりしたら、刀打てなくなっちゃうよ」
心配する和泉に降りかかるのは、化けの皮を剥がし本性を剥き出しにした菊の言葉である。それは紳士の装いではなく、道を外れた者の甘言だった。
「彼にこれ以上の風穴が空くかどうかは、あなた次第ですよ」
「菊さん……」
「彼との出会いを忘れろとは言いません。美しい過去の思い出に出来るなら、そこに血生臭い色は付けたくありません。あるいは、近藤虎徹、あなたが僕の配下に付くのも手かもしれませんね」
「何言ってるの、意味分かんないよ。何で虎徹が、ヤクザにならなきゃいけないの」
「彼がそばにいれば、あなたは安定するんでしょう? ならば無理に引き離すより、手元に置いて管理した方が早いです。僕も彼は気に入ってますから、むげにはしませんよ」