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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
菊の言葉に、和泉は揺れる。周りは敵だらけで、虎徹も負傷している今、窮地を乗り切る方法を和泉は見出せなかったのだ。
「さあ和泉、決めなさい。彼の風穴を増やすか、説得するか。僕はどちらでも構いませんよ」
深く考える隙を与えず、菊は答えを迫る。そして、和泉が身を離そうとした瞬間。虎徹は左手で和泉の腰を抱き、口を開いた。
「何でも一人で決めようとするな。俺達は、恋人なんだろ?」
「でも……」
「大丈夫だ。俺には、刀がある」
虎徹は一度和泉を離すと、撃たれた時に落とした刀を拾う。そして菊の前に立つと、とうとうその鞘を抜いた。
「虎徹、まさか」
和泉の頭に過ぎるのは、虎徹の手が汚れてしまう最悪の展開。慌てて間に入ろうとするが、初めて見る刀に目を奪われ、思わず足を止めてしまった。
平たい鉄の塊から出来たとは思えない程の鋭い刃に波打つ刃紋。僅かに反った刀身や切っ先には、武器としての効率の良さも詰まっている。格子に遮られた光にも反射し輝く刀は武器でありながら、和泉の思う最悪とは真逆の、真っ直ぐで真っ当な存在だった。