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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
 
「この刀は、お前にくれてやる。その代わり……和泉を解放してやってくれ」

 虎徹は刀を突き出したまま、頭を下げる。柄を握る腕は、傷付いた右腕である。隙を付き、斬り殺すつもりではない事は明らかだった。

「この刀と和泉が、同じ価値だと言えるのですか?」

「ああ、言えるさ。俺は刀匠だ。この俺が和泉を思いながら打った刀なんだから、価値がない訳がない」

 菊は虎徹から刀を受け取ると、検分するように掲げる。

「確かに、その辺の刀匠が小遣い稼ぎに打った安物とは違いますね。僕は刀に詳しくないのですが、これが業物である事は理解出来ます」

「あんたには言いたい事が山ほどある。正直今すぐぶん殴ってその面をボコボコにしてやりてぇが……それじゃ駄目なんだ。俺を生かすために、自分を犠牲にする奴がいる。なら、俺も一緒に帰らなきゃ意味がないんだよ」

「――実に美しいですね。刀も、あなたの志も。僕への怒りを抑えるだけでも大変でしょうに。それだけ、本気で和泉を愛しているのですね」

 だが言葉に反し、菊は切っ先を虎徹の喉元へと突き付けた。
 
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