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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
 
「ですが、最も美しいかと問われれば、どうでしょうか。刀とは古来より武の象徴とされていますが、実用性は低い武器です。実際の合戦では、槍や弓の方が多く使われていたと言われています。いかに効率良く人を殺せるか、僕はそれが武器の真髄だと思うのです」

「つまり、交渉決裂って事か?」

「今ここであなたの首を落とし、刀も和泉も総取りする選択肢も、僕にはあるという事です」

 喉にひたりと当たる刃は、ほんの少し力を加えるだけで皮膚など簡単に切り裂いてしまえる。その冷たさに虎徹が焦燥感を抱いた、その時だった。

「見苦しい真似はよせ、菊」

 突然襖が開いたと思えば、白髪をオールバックにしてまとめた、着物姿でたっぷりと髭を蓄えた老人が無遠慮に場へ割り込んでくる。老人は菊の刀を取り上げると、まじまじとそれを眺め、一言呟いた。

「流石、関の弟子だ」

 関という名前に、虎徹は心当たりがある。この老人が何者か。虎徹は疑問に思いながらも訊ねた。

「もしかしたら、俺の師匠をご存知なんですか?」

 老人は虎徹を一瞥するが、すぐに刀へ視線を戻す。しわがれた声には重みと、深さがあった。
 
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