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女は抱かれて刀になる
第1章 始まりは金曜日
和泉は聞いているのかいないのか、辺りを見回しながら生返事する。そして虎徹の手を引くと、部屋の外を指差した。
「ねぇ、じゃあ今日は社会見学する! 虎徹って鍛冶屋さんなんでしょ? 刀打ってる所見せてよ」
「鍛冶場は見学できるが、刀は打てないぞ。デモンストレーションで打つような鉄はないからな」
「えー? おじさんのケチ!」
「おじさんじゃなくて虎徹だ。見学もいいが、その前にメシだ。おじさんのわびしい手料理で申し訳ないが、腹減ったまま動くよりマシだろ」
「食べる! ご飯大好き!」
「そこは『ご飯』じゃなくて『虎徹』って言えよ」
「いいじゃん、ご飯と虎徹、似てる似てる」
「全然似てねえ」
適当な言葉や態度も、一回り以上年上の虎徹からすれば可愛いものだ。虎徹は機嫌良く笑う和泉を茶の間へ連れ出し、白米に漬け物、そしてふりかけだけという、言葉通りわびしい食事を持ってくる。和泉がどんな文句を言うかと構えていたが、和泉は意外にもけろりとしていた。
「うわ、ホントわびしいね! いただきます」
驚いてはいるが、怒る様子のない和泉に、虎徹の方が目を丸くしてしまう。