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女は抱かれて刀になる
第1章 始まりは金曜日
そんな虎徹のうろたえに気付かず、和泉は大口で、しかし気持ち良くふりかけご飯を食べていく。食いっぷりの良さに、虎徹は苦笑いを浮かべるしかなかった。
和泉は米粒一つ残さず食事を終えると、しっかり手を合わせ御馳走様と口にする。そして食べた食器を持つと、片付けを申し出たのだ。
「片付け? 食器を洗えるのか?」
「そんなところから疑問なの!? もう、虎徹って失礼! 人の家でご馳走になったら、片付けくらい手伝うのは常識でしょ!?」
初対面の男を誘う和泉に常識を語られるのは癪だが、虎徹の中でもそれは同じである。人の出すものに文句を言わない、手伝いをする、和泉は言動に反して、分別がある。
(……それならどうして、俺なんか誘ったんだか)
再び沸いてくるのは、目の前の純朴な少女とはかけ離れた鋭い瞳への疑問。だが、愚直にそれを訊ねれば、和泉はきっと虎徹の前から姿を消すだろう。それが分からないほど、虎徹は鈍くなかった。
結局虎徹は疑問を飲み込み、和泉が食器を洗う様子を後ろから眺める。手際の良い姿は、家事に手慣れている何よりの証拠だった。