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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
「刀に魅入られた人間で、関の名を知らん奴などいるはずがない。その関が唯一取った、弟子の名もな」
老人は虎徹に刀を返すと、手を差し出す。
「後でサインくれ。床の間に飾りたい」
「え? ああ……はい」
虎徹が戸惑いながら握手すれば、老人は満足げに頷く。すると菊が苦虫を噛み潰したような表情で、老人に怒鳴りつけた。
「おじい様! これは僕の問題です、口を挟まないでください!」
「おじい様?」
この家にいるのだから、老人が真っ当な職の人間でない事は予測出来る。が、まさか菊の身内だったとは思わず、虎徹は目を丸くした。
「口出されたくないなら、家ん中でパンパン撃ってんじゃねえ。人がせっかく気持ち良く昼寝してたってのに」
「それは……」
「それも仕事ならともかく、女絡み。ったく、くだらねぇ」
老人が和泉に視線を向ければ、和泉は虎徹の背に隠れる。だがすぐに顔だけ出すと、おずおずと訊ねた。
「おじいさんは、ヤクザの親分なの……?」
「せがれに家督を継がせて隠居した、ただの刀好きの爺だ。嬢ちゃんを取って喰うつもりはねえ」