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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
老人は、虎徹達と同じく困惑していた菊の部下に、声を掛ける。すると組員は慌てて部屋のタンスを開き、着物を取り出し和泉に差し出した。
「ガキの裸なんぞ見ても慰めにもならん。着ておけ」
「あ、ありがとうございます」
すっかり裸である事に慣れてしまっていた和泉だが、改めて意識すると羞恥が蘇る。慌てて着物を羽織ると、手早く帯を締めた。
「菊」
それから老人は菊の方に向き直ると、深みのある声で話を続ける。
「話を聞かせてもらったが、お前の負けだ。屁理屈こねて無様な真似を晒すな」
「僕は、負けてなどいません!」
「いいや、負けた。お前は虎徹先生に『交渉』という戦いを挑んで、結局暴力で収めようとした。だが虎徹先生は最後まで、俺らやくざ者に対して言葉を貫いた。交渉のテーブルから降りた、お前の負けだ」
「僕が話をしているところに、おじい様が割り込んできたのでしょう!? 暴力だなんて、とんでもない。刀一本では不備であるから、交渉は決裂したんです」
「じゃあなぜ、お前は刀も取ろうとしたんだ?」
その問いに、饒舌だった菊が黙り込む。